楽しく踊るLOCK DANCE、その理由と背景
楽しく踊るLOCK DANCE、その理由と背景
世界には数えきれないほどの種類のダンスがあります。日本でいわゆる "ストリートダンス" と括られているSOUL、LOCK、POP、BREAK、HOUSE、HIPHOP、WAACK、VOUGE、REGGAE、BE BOP、FOOTWORK、KRUMP…それにバレエやジャズ、タップにモダン、コンテンポラリー、アフリカン…これらの中でもロックダンスはある意味で特異なダンスジャンルであると言えます。それは主に【楽しく踊る】からです。「楽しく踊る」と一口に言っても多種多様な捉え方がありますので、このコラムにおいては「踊る側も観客側も笑顔になるようなダンス」を指すこととします。
例えばバレエは上品に美しく、BREAKは迫力があり挑発的に、BE BOPはジャズミュージックに忠実に、KRUMPは怒りを原動力に…など、それぞれのダンスには大きなテーマがあるように思います。LOCKの場合はそこに【楽しくFUNKYに】というフレーズを当てはめるのが妥当であると感じます。
●なぜ、楽しく踊るのか?
筆者が数年前に参加した、あるダンスイベントがありました。それはTHE LOCKERSの後期メンバーでもあるTONY GOGO(トニー・ゴーゴー)氏が主体となり、ロックダンスを今一度しっかりと伝え、次世代へ継承したいという主旨のイベントでした。ダンスバトルやショーケースが全体の大半でしたが、他のイベントと大きく一線を画すコンテンツがありました。それが、トニー氏による質疑応答の時間でした。ロックダンスを志す若者にも、長年携わってきたベテランダンサーにとっても大変貴重な企画でした。その中で、参加者からある1つの質問が飛び出しました。
「ロックダンスは、なぜ楽しく踊るんですか?」
とてもシンプルな質問ですが、それゆえに多くの人が疑問にすら思わなかったような事柄です。ロックダンスといえば楽しく踊るもの!そのイメージが定着していることは素晴らしいことですが、確かに、そもそもロックダンスはなぜ楽しく踊るようになったのか…その質問のあと、会場中の誰もがその回答を固唾を呑んで待ちました。なぜなら、それを答えようとしているのは他でもない、ロックダンスの始祖であるTHE LOCKERSのメンバーその人なのですから。
そして彼は答えました。
「好きなダンスをする時くらい楽しみたかったから!」
●時代と背景を知る
トニー氏のその答えは一見シンプルで何ということもないような印象を受けますが、トニー氏らがロックダンスを始めた頃のアメリカの時代背景に思いを馳せてみると、また捉え方が変わってくるのではないでしょうか。ロックダンスが世間的に大人気になったのは1973年頃です。以前のコラムで記述したように "SOUL TRAIN" の放送や "THE LOCKERS" の結成が大きな分岐点です。話はその20年ほど前に遡ります。
アメリカの【公民権運動】をご存知かと思います。1955年に起きたローザ・バークスという黒人女性が受けた差別を皮切りに、キング牧師を筆頭にした、白人による黒人への差別を無くし、公民権を与えて欲しいという訴えを掲げた活動が始まります。それが公民権運動です。詳しくは割愛しますが、その運動を通して黒人の人権を認める法律が出来たのは、1964年のことでした。
しかし法が制定された途端に長年の差別が一気に払拭されるわけもなく、黒人たちは過酷な労働や差別を強いられ、翌年にワッツという都市で大きな暴動が起きてしまいます。その事件の痛みが治まるキッカケとなったのが1972年に "黒人による黒人のための大規模ライブ" として開催された【WATTSTAX(ワッツタックス)】でした。
ローザ・バークス事件からゆうに20年近くが経つその頃、ようやく黒人が活躍する音楽番組であるSOUL TRAINが立ち上がり人気となったり、黒人発祥のロックダンスが脚光を浴びたり…そういう時代だったのです。「これからは自由に、自分らしく踊っていいんだ!」という事実は彼らにとっては大変喜ばしいことだったのでしょう。その時代の真っ只中で生まれたロックダンスは、自然と笑顔あふれるダンスになったということだと思います。
それから前述のトニー氏の住んでいた地域ではアメリカ特有の悲しい事件が日常茶飯事だったようです。そういった事情もあり「ダンスは楽しく!!」という境地にいたったのではないでしょうか。そこで哀しみや怒りといったネガティブな表現ではなく、楽しくHAPPYに!という表現へと向かうところが、黒人(アフリカンアメリカン)という人種の持つDNAに由来するところなのかもしれませんね。
●まとめ
今回は一見ダンスに関係ないようで、実はとても本質的で大事な根幹である黒人の歴史について少し触れてみました。ほんの一部分にすぎませんが、かつて奴隷として扱われていた黒人たちの生み出した "楽しいダンス" これからもより一層大事に踊り紡いでいきたいですね。
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