ビデオの進化とダンスの関係性
ビデオの進化とダンスの関係性
みなさんは、普段いろんな場面で動画を撮影したり閲覧なさったりしていると思います。日常の何気ない出来事であったり、面白いこと、大変なこと、びっくりしたことや感動したことなど、ふとした時にパッと手軽に動画を撮影することができる時代ですよね。そしてそれを共有するツールも数多く存在し、共感したり、意見を言い合ったり、拡散したりすることも、スマホやパソコンを使っていともたやすく誰でも行うことが可能ですね。
HIPHOP、LOCK、POP、HOUSE、BREAK、WAACK…いわゆるストリートダンスのあれこれについて書き綴っているこのコラムですが、今回は【 ビデオの進化とダンスの関係性 】という点にフォーカスを当てて文章をお届けしてまいります。
●スマホ登場以前のビデオ事情
2007年にアメリカのApple社より発売された新型携帯電話「iPhone」をはじめとするスマートフォン(以下、スマホ)やアプリの普及が進むにつれて、動画の撮影・共有・作成・編集・拡散など、それまで専門家しかできないと思われていたものが一気に敷居が低くなっていきました。時代の流れに乗り遅れつつも筆者がスマホを手にした2014年辺りには、とっくにその習慣が根付いており、それからというもの筆者もこの文明の利器の素晴らしさにあやかり、存分にダンス活動に活用させていただいております。
現在、当たり前のように動画を使いこなしている世代の人たちには「そうでなかった時代」を想像することすら難しいのではないでしょうか。そこで、参考までに筆者が専門学校に通っていた2004年辺りのお話をしたいと思います。
・イベントとダンサーの価値
当時、リアルなダンサーを見に行くにはダンスイベントに行くのが一番の手法でしたが、いろんな意味でとても価値や敷居が高かったのです。学生でしたから、チケット代や交通費なども決して安いものではなかったですし、今のように沢山のイベントがあるわけでもなかったのです(日程がかぶったりすることは稀だったように感じます)。なので、一回一回のイベントに対して常に期待感が高かった記憶があります。沢山のダンスフリークの方々も同じ心境でしょうから、当然混雑もします。それに加えて、一流のダンサーのショーが見られるという価値ももちろん高かったのですが、一番はやはり【 その場にいないと見ることができない 】という事実が、イベントに行くことの価値やダンサーそのものの価値を何よりも高めていた要因であると言えます。
そこでしか見られない価値あるショーを期待されるダンサー側もまた、気合を入れて作品のクオリティを高めて本番に臨むわけですから、お客さんの満足度も高くなり、いいスパイラルが生まれていたんだろうということは容易に想像ができますね。言うまでもなく、現代のダンサーも技術や振付など魅せ方が卓越していますが、昔はやはり、動画でその魅力を共有できない分、口コミで「あのチームすごかったよ!」「あの人のソロやばかったよ」「次あったら絶対見に行こう!」などという風に話題になるに越したことはないので、今とは違った理由で必然的にレベルが高かったのではないでしょうか。
・ビデオを撮りたい時はどうしていたのか
スマホがない時代でしたが、ビデオを撮影することは出来ました。ただし、家庭用のビデオカメラが必要でした。もちろんハンディカムのような手のひらサイズのような最新型はなかなか普及しておらず、今ダンスイベントなどで持参したら重さと大きさで邪魔でしかないようなサイズのビデオカメラです。それでも、貴重な動画を撮影できる機材ですから、頑張って持ち運んだり撮影したりしていました。中には、せっかく持っていったのに撮影禁止なイベントやチームがあったりしました。そこもやはり、ダンサーやイベントの価値を高める要因だったと思える点ですね。
そうして記録した貴重な資料は、イベントに行けなかった学生に後日見せたり、VHSにダビングしたりして研究させていただいたりしました(今でも大事に保管してあります)。
・余談
この頃、DA PUMPさんたちがMCを務める深夜番組「少年チャンプル」が放映されていました。リアルなストリートダンスチームが数々登場し、普段クラブなどで披露しているショーを踊ってくれたり、その場限りのユニットやショーケースも見ることができました。前述したように、ビデオ撮影が簡単ではない時代でしたから、ダンサーにとってはとても貴重な番組でしたし「(少年)チャンプルでダンス見てダンサーになりました!」という人も少なくないはずです。それから「スーパーチャンプル」と名前を変え、人気は続いていったのです。この事からも、いかにダンス映像が希少価値が高かったかを窺い知れる事実となりうるのではないでしょうか。
ここまでは「前時代」と言っても過言ではない、スマホ以前のビデオとダンスの関係性についてお話ししてみました。簡単に撮影ができない中でのダンスの楽しみ方やワクワク感などが少しでも伝われば幸いです。次回、後編では昨今のビデオとダンスについて述べさせていただきたいと思います。ぜひお読みください。
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#ダンスコラム
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